蝉の鳴く部屋

彼はあれから一人でいることが多くなった。
昨年まではあんなにも周囲に人がいたのに、今では声をかける人のほうが少ない。
今だって、彼の怪我をした顔を見ても、気になってはいても誰も声をかけてはいない。

だから、ぼくが、おはようと彼に笑顔で声をかける。
すると、彼は怯えたように顔を歪ませ、おはよう、と震える声で返してくれた。
そうだよ。
君を見るのはぼくだけ。それでいいんだ。

クロッキー帳 / 鉛筆

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