―ある日、あるプルトの、ある光景― 時は5日。今年もこれからだというのに、とぼとぼと歩いている人物がいる。 「はあ…」 彼は大きな溜息を幾度もつきながら、我が家へと向かっていた。 「あ、パパ!おかえり〜!」 扉を開けると、娘のアルネシアの明るい声が響いた。 「おかえりなさい。評議会、お疲れさ………ナガツキ…?」 妻のオーレンがその夫の落胆ぶりに気付き、心配そうにその顔を覗き込んだ。 「…何かあったの?」 「……つが…」 ナガツキはぼそっとつぶやいた。 「つが?」 「挨拶が……」 彼は拳を握り締めた。 「挨拶が『イムイム〜♪』になったんだあああ!!!!」 …… …… …… 一瞬、何かが通ったかのように静かになった、が 「……なんだ、そんなこと」 アルネシアの姉でナガツキの長女である、ユーシェンが冷めた目でナガツキを見つめている。 「わ〜い、イムイム〜♪」 アルネシアはとても楽しそうだ。 「かわいい挨拶じゃないの」 オーレンもそんなことかとほっと安堵の胸を撫で下ろしている。しかし… 「俺は……俺は…… 俺は恥ずかしいから嫌だああ〜!!!」 ナガツキは真っ赤になってそう叫ぶと、泣きながら家を飛び出していった。 「ああ!ナガツキ、待って〜!!」 オーレンはナガツキの後を追って、外を飛び出していった。 残されたアルネシアとユーシェンは…… 「……鼻の下を伸ばしながら『あなた頑張ってね(はあと)』『うん、がんばる(はあと)』ってやってる人が、今更何をいうのかしら… それに比べたら、私はイムイム〜♪の方が良いわね」 そう言ったユーシェンは相変わらず冷めた目だった。 「ほえ?」 「……アルネシア、あんたも相変わらずね」 プルトは今日も平和です。 |
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