■第四話『長男坊のホントの気持ち』

ウォルナット
(ああ、やっと、あの家を出ることが出来た…。これで俺はあいつらから解放されたのだ! …とはいうものの、確かにキーコとの新婚生活は楽しいもののはずなのに、胸の奥のほうに隙間ができてしまったような、そんな感覚がある…。それは何故だ…)
マラビーヤ
「素直に認めてしまいなさい、ウォルナット君?」
ウォルナット
「うわあああ!! だ、誰だっ!? …ああ、叔父さんか。驚いた」
マラビーヤ
「前から言ってるけど、お前とはたった一つしか違わないんだから、さすがに叔父さんって言われるのは嫌だなあ。ね、『クルミ』君?」
ウォルナット
「… …で、『マラビーヤ叔父』さん。素直に認めなさいって何がです?」
マラビーヤ
「… …別にいいけどさ。いや、だから、寂しいってこと」
ウォルナット
「は?」
マラビーヤ
「普通は誰しもそうだろう。あんなに大家族で賑やかに暮らしていたら、家を出て急に2人の暮らしになったら誰だって一度は寂しいと思うよ」
ウォルナット
「…」
マラビーヤ
「しかし、意外だったね。コハクが結婚した時に話してたんだけど、お前は最後まであの家にいるつもりなんじゃないかって」
ウォルナット
「…まさか」
マラビーヤ
「兄貴は何だかんだといいながらお人好しで弟思いで面倒見がいいから、全員を見届けてから、って思ってるんじゃないかってコハクは言っていたんだけど?」
ウォルナット
「(コハク、お前…)…まあ、そういう気持ちが確かにあったのも認めますけど。せめて3人が片付くまでは、とはね。だけど、サルファーはマイペースでのんびり交際しているし、ソラは未だに恋人いないし。そんな状態じゃ、いい加減、俺自身が親に孫の顔見せてやらないと、と思いますよ」
マラビーヤ
「あはは、そうだね。でも、孫か。耳の痛い言葉だ…」
ウォルナット
「…すいません」
マラビーヤ
「いいんだよ。父さんに僕の子供の顔を見せてやれなかったのは事実。今だってだらだらと交際を続けているし。家庭を持つっていうのは大変なことだろう。僕にはその決断がまだできないんだ、今の状態が居心地がよすぎてね」
ウォルナット
「…」
マラビーヤ
「だけど、親孝行はできるときにやっておくべきだよ。…そして、絶対に姉さんや義兄さんを悲しませたらいけない」
ウォルナット
「マラビーヤさん…」
マラビーヤ
「子供が親より先に逝ってしまうなんてこと、やっちゃいけない。メルファン兄さんがそうなったのは誰のせいでもないって分かってるけど、父さんのあんな泣き崩れた姿を僕はそれまで見たことがないよ…。実際に、どうなるかなんて分からないことだけれど、出来得る限り、はね」
ウォルナット
「…俺は『まだ生きるの!?』ってプレーヤーが嬉しい悲鳴をあげるくらい長生きしたいですね」
マラビーヤ
「そうだね。お前は長生きしそうなタイプな気がする」
ウォルナット
「本当にできるかは分からないけど。…あ、俺、そろそろ行かないと」
マラビーヤ
「どこに行くの?」
ウォルナット
「リム区西邸。お袋から呼ばれてるんですよ、末の弟が歩き出すからって。結婚して2日目の新婚家庭なのに呼び寄せるなんて気が利かない人達だと思いません?」
マラビーヤ
「でも、呼ばれないと呼ばれないで、拗ねるんだろ?」
ウォルナット
「…かなわないなあ、あなたには」
マラビーヤ
「僕はお前の兄みたいなものだからね。フラージャ姉さんのところの娘さん達や君たちのお陰で、僕は末っ子だけれど兄のような立場にもなれた。こういうの嬉しいことだよね」



ジェイド
「…うわあ。小さい手…」
ウィロー
「?」
ウォルナット
「…」
ジェイド
「あ、クルミ兄さん! おかえり〜…、あ、違うね、いらっしゃいませ! 何か用事?」
ウォルナット
「いや、ウィローの顔を見にきたんだけど。なんか、同じような顔をしたのが2人いるのは気のせいか?」
アズール
「あれ、クルミ兄、きてたの? …トドメに顔がかぶるなんて、母さんも気の毒だよなー。また暴れてたんじゃないの?」
サルファー
「いらっしゃい、兄さん。…さすがに最初は驚いてたみたいだけど、今まではなんだかんだ言いながら兄弟でかぶったことがなかったみたいだから、逆に新鮮だって言ってたよ」
アズール
「そういうもんかなあ」
ジェイド
「…ソラ兄さん。ぼく、なんか、鏡見てるみたいな気分になってきたよ…」
アズール
「だろうなあ。お前達、ホントそっくりだもん。双子みたい。…むしろ双子の弟達ってことにしちゃおうか? うん、それもまた良いじゃん! ああ、2人そろってぷにぷにしててかわいいよなあ。よし、まとめてこうだー!(ぎゅ〜)」
ジェイド
「うわー、兄さん、やめてよ! 苦しいよー!」
ウィロー
「やだー!」
ウォルナット
「俺とソラの時とは違って、本気で見分けつきにくいだろうなあ、コレ…」

とりあえず、おしまい。
あ、叔父マラビーヤはパス置き場ではセルカって名前です。セルカは、このデータではファレーネに継承後に誕生したのでデフォルト名のままなのです。実はファレーネとマラビーヤの間にもけっこうな年の差があるのですな。

とりあえず、オチ↓

アンバー
「ていうか、俺、出番なし? がーん。ひどいわっ、プレーヤーったら! 継承プレイだったなら、継承してくれたくらい、わたくしがお気に入りじゃなかったの!? それなのに、それなのに…。うわーん、ぐれてやるうう!(ハンカチを咥えながら退場)」

第3話 / 戻る / 第5話