■第五話『双子のような兄と弟』

はてさて。残っていた二番目と四番目もようやく結婚して家を出ていきました。
ちなみに、ソラの結婚相手は何歳か年下でした。管理人が乗り移っているファレーネも、あらビックリ。
ファレーネ
「私は、あなたには、絶対に年上が似合うと思ったのにい。ていうか普通に年上と結婚すると思ってたわよ?」
アズール
「ん〜、それは、サルファー兄にもすすめられたけどさー、やっぱ、年下のほうが可愛いし、いろいろ得じゃん? あは、なーんてね。別にそんな理由でミッキーを選んだわけじゃないんだけどね。だって、ほら、ミッキーがたまたま年下だったってだけで、やっぱり根底にはなんていうか、そのー…愛があったっというわけで。うん、愛があれば、年齢なんて関係ないってね。あ、そうだ。折角だから、ミッキーとおれとの馴れ初め、聞く? ねえ、聞く? そう、あれは、雪の降ってる日、3年に一度、バグウェルが訪れる年にやってくるサーカスがやってきた日だった。隣に座っていた女の子は…(以下続く)」

惚気が始まりそうなので、この辺りで強制終了しておきましょう。

とにかく、最大8人家族の賑やかだったこの家も、今や家族の人数はその半分。
当時の賑やかさに比べると、やっぱりファレーネも幾分か寂しくなったなあ、と思うようになりました。

ジェイド
「ねえ、ヤナギ、この家も随分広くなっちゃったね…」
ウィロー
「ん〜、そう?(もぐもぐ←何かを食べているようだ)」
ジェイド
「ぼくが生まれたばかりの頃は、兄さん達が騒々しいっていくらい、賑やかだったのさ。何の因果かアクの強い人達ばかりだし。まあ、当時の母さんを見れば息子達がそうなるのは必然って感じもするけどさ…」
ウィロー
「ふうん。でも、おれはそこまで思い出がない。だから、何ともいえない(もぐもぐ←まだ何かを食べている)」
ジェイド
「あ、そうか。お前はまだちっちゃかったもんな」
ウィロー
「あのな、兄貴、この際だからおれの意見をきちんと言っておく。おれは、あんな人たちと毎日一緒にいたくない。はっきり言ってうざい。今だって年末年始にくるけど、酒盛りのどんちゃん騒ぎで、どうにも下品なダンスを踊りだすわ、これまた下手くそな歌をうたいだすわ、最後には脱ぎだすわで、近所にも大迷惑だ。年甲斐もなく見苦しい上に、後片付けは誰がするかということも、ちっとも考慮してない。ああいう手合いの輩はな、年に一度会うだけで十分だ。おれは静かな空間の中でゆっくり時を重ねていきたいね(もぐもぐ←口の周りにジャムをつけながら何かを食べている)」
ジェイド
「お前ね…。それ、サルファー兄さんかコハク兄さん辺りに聞かれたら、ただじゃすまされないぞ…」
ウィロー
「はいはい。兄貴は、母さんとその二人が怖いんだよなあ。ちょっと前に、どこから取り寄せたか分からないメイド服を着せられた上に、ピンクの髪のかつらもさせられてたっけね。だけど、おれは別に怖くなんかないね。「ういろう」と呼ばれようが、別に構わん。全く気にしない(もぐもぐ←やっぱり何かを食べている)」
ジェイド
「…」
ウィロー
「なあ、強くないと、この先は、生き残れないぜ、兄貴?(もぐもぐ。ごくん←食べてたのをたいらげたらしい)」
ジェイド
(はっきりいって可愛くない…。兄さん達、ヤナギってば可愛くないよ。本当に弟? いや、確かに顔はぼくとそっくりで兄弟であることは疑うべきもないのだけれども。この憎らしさはなんだ…。昔はもっと可愛かったのに。確かに可愛いかったはずなのに…。どうしてこんなふうになったんだ…。育て方を間違ったのかな、ぼく…)
ウィロー
「ああ、美味かった。ごちそうさまでした」
ジェイド
「… …って、ちょっと待て! 今、お前が食べてたの、ぼくの分のジャムクッキーじゃないのか!?」
ウィロー
「はあ。兄貴、やっと、気づいたわけ?」
ジェイド
「…」
ウィロー
「相変わらずとろいな」
ジェイド
「…」
ウィロー
「うん、今日のは特に美味かったよ。満足満足」
ジェイド
「…」
ウィロー
「残念だったな、兄貴。大好物なのに。早く食べないから――」
ジェイド
「〜〜〜〜〜こんの…馬鹿ヤナギ! 今すぐ返せ! 今すぐ吐き出せ!(そういって、ヤナギの口をこじ開ける)」
ウィロー
「い、いひゃい、いひゃいー! ふり! ふぁめりょって!!(訳:痛い痛い、無理、やめろって!)」
ジェイド
「あ(慌てて手を離す)」
ウィロー
「げほっ、けほっ。苦しかった…」
ジェイド
「…」
ウィロー
「えと、兄貴…?」
ジェイド
「…ヤナギ、一つ、聞きたい。どうして食べたの? もしかして、ぼくに意地悪をしようとした?」
ウィロー
「…」
ジェイド
「答えがないのは肯定と取っても?」
ウィロー
「…ええっと…(目逸らし)」
ジェイド
「(ぷつん←何かが切れたらしい)食べ物の恨みは恐ろしいってことを存分に味わわせてやるっ! さあ、こっちに来い!」
ウィロー
「兄貴っ! まてっ、兄貴! 話せば分かる! う、うわあああ!!」



(二人の様子を眺める二つの影)

ファレーネ
「すんごく今更だけど、全く同じ顔で、本当にどっちがどっちなのか分からなくなってくるわね…。私達でさえ間違えるときがあるのだから、外ではそれ以上よね。ううむ、ヒスイが成人してくれればまだ見分けがつくんだけれどなあ。あ、今度どどんと名前の入った服でも着せようかしら。うん、グッドアイデア! そうよ。どうして今まで気付かなかったのかしら! やーね、私ってば。うーん、そうねえ、それぞれの名前の由来になった色の生地に、玉虫色の布地を使って名前を入れましょ。うふふ〜」
アムラーム
「…玉虫色の布地って…。そんなのあるのかい…?」


…いまいちでしたな。

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