■第八話『フェン家とジマ杯』

前回のことから、ほんのちょっとだけ時間はさかのぼります。 二人がキャッチボールを始める前に、ファレーネはアムラームとジマ杯の組合せを見に行くために、神殿前を訪れてました。

ファレーネ
「あら。これって、見間違い、じゃない、わよね?」
アムラーム
「ん、どうした?」
ファレーネ
「ほら、見て。ソラも、ジマ杯にエントリーされてるみたい」
アムラーム
「え…? ああ、本当だ。今年初めてAリーグにあがったのは知っていたけれども、いきなり夜の大会に出場か。少し驚いたな」
ファレーネ
「ソラは、第一試合。私は第二試合か。どっちもが勝てば、次の二回戦目でかち合えるわね。ふふっ」
アムラーム
「随分と嬉しそうだね。そんなにソラと試合するのが楽しみかい?」
ファレーネ
「あら、それは勿論よ。あなたとも一度は試合してみたいけれど、息子達とも交えてみたいじゃない。それこそ、『あなたがどれだけ強くなったか見せてもらうわ』ってね」
アムラーム
「そうだな、僕は今年のリーグ戦でも戦えるけれど、できたら、先にジマ杯でも当たりたいね」
アズール
「あ。親父とお袋だ。あけましておめでとう! ヤナギの成人式は終わったのか?」
アムラーム
「おめでとう。ああ、成人式の帰りだよ」
アズール
「後でヤナギにおめでとうーって伝えといてよ。…今年も本当は宴会やりたいんだけどなあ。でも、当の本人が嫌がりそうだよなあ。ほら、昨年のこともあるし、その案を口に言うだけできついこと言われそうでちょっと怖い」
ファレーネ
「あの子は、口で言うほど嫌がっちゃいないわよ。そういう意味ではコハクってあの子の扱いが本当に上手いと思うわ」
アズール
「ええ〜っ。そうかなあ。だって、いつも喧嘩ばっかしてるだろぉ? 少なくとも昨年のアレはマジだったって」
ファレーネ
「…まあ、確かにあれは、度が過ぎていたわね。ヤナギを宥めるのにどれだけ苦労したことか」
アズール
「コハク兄も、もちっと考えろってのな」
ファレーネ
「ところで、ソラも今年のジマ杯に出場するのね」
アズール
「あ、そうそ。そうなんだよ! 対戦表、見てくれた? 一回戦目を無事に勝てればお袋と対決できるな」
ファレーネ
「ええ。でも、最初にAリーグに上がってくるのが、あなただとは思わなかったわ」
アズール
「ふふん。少しは見直したかい?」
ファレーネ
「…っていうか、よく考えたら、あなた、兄弟中では唯一早熟だったっけ。まあ、順当にいけば当たり前よね」
アズール
「… …あのさ、これでも、それ以外にも、ちゃんと努力してるんだけど、おれ」
ファレーネ
「あー、はいはい。それに早熟型は今のうちにあがっておかないと、本当に出番なく終わっちゃうことが多いしねえ」
アズール
「…」
ファレーネ
「ふふふ、とにかく、あなたと戦うの、楽しみにしてるわよ」
アズール
「…当たってもいじめないでくれよ、頼むから」



(それから数日後)



ファレーネ
「…って言ったのに! どうして、どうして、あなたは一戦目で敗れてるのよ!」
アズール
「う…」
ファレーネ
「しかも、あの試合は一体何!? ジマ杯なのに、体術を使わないなんて普通はしないでしょう! この単細胞! もっと戦術を考えなさい!」
アズール
「た、単細胞だってえ!?(かっちーん)ふ、ふん。だ、大体なあ、そういうお袋だって、初戦敗退してるじゃん! おれが勝っていたとしてもお袋も勝たないと意味ないんだからな。自分のことを棚上げすんなよ! それにおれはコークショルグ員なわけで、そもそもジマ杯に向いてるわけじゃないんだ!」
ファレーネ
「う…(思わぬ反撃に後ずさり)」
アズール
「あとさ、お袋、その青い色のローブを着てる理由は、ジマショルグ長だからじゃなかったっけ〜?(←ファレーネが怯んだので、調子に乗っている)」
ファレーネ
「…」
アズール
「それも、もう10年以上努めている年季の入ったショルグ長のはずじゃねえの? そのショルグ長さんが初戦敗退なんて、ちょっとかっこ悪いって思わない?(にやにや)」
ファレーネ
「… …ソラのくせに生意気だわ(握り拳)」
アズール
「… …やばっ(口を噤む)」
ファレーネ
「うふふ、そうね。さすがに、私も技のかけ方が甘いかしらと反省したわ。そして、あの後、しばらくは訓練に勤しんだのよ。最近、さぼっていたなって。その成果は、次のリーグ戦がイム争奪戦まで取っておこうと思ったんだけど、その前に見せてあげましょうか? ねえ、この『ドラゴンゲイル』見せて欲しい? ねえ、ソラ?」
アズール
「ほ、ほしくないです! ちっとも要りません! 要りませんから、許して下さい!(泣)」
ファレーネ
「… …あーあ、本当に楽しみにしていたのになあ。ちょっと、気が抜けちゃったわ…」
アズール
「…お袋、ごめん」
ファレーネ
「いえ、お互いに、よね。また次の大会で戦えればいっか。その時は思いっきりゲイルをお見舞いしてあげるから楽しみにしてらっしゃいね(にっこり)」
アズール
「いや、本当に、ゲイルは勘弁!(汗汗)」

アムラーム
「… …で、二人とも試合は見ていてくれたのかい?」
ファレーネ
「…へ?(そ、そうだ、私はアムラームの試合を見に来たんだった…!汗)」
アズール
「あ、えっと…(す、すっかり忘れてたよ…!汗)」
アムラーム
「(深いため息)いいよ、もう…。そんなことだろうと思っていたから」
ファレーネ
「ほ、本当にこんなつもりじゃなかったのよ…。ソラの顔を見て、文句言わないと収まらなくなっちゃってさ。それで、試合のほうはどうだったの?」
アムラーム
「…ん、勝った…」
ファレーネ
「ああ、そう。あなたも初戦で勝って…。やっぱりね、仕方ないわよね。あなたもコークショルグ員だし、勝ち抜いてしまっても…。… …って、え!? 嘘!? 勝ったの!?」
アズール
「うわ、やったじゃん、親父! 親父が夜の大会で初戦突破をするの初めてだったよな?」
アムラーム
「まあ、うん…」
ファレーネ
「アム…、素敵!(抱きつき)この調子で私達の無念を払って、優勝を狙ってちょうだい!」
アムラーム
「ち、ちょっとちょっと、こんな人前で抱きつくなよ! もう…」



(かくして時は流れて…)



アズール
「…」
ジェイド
「…」
アムラーム
「…(祝辞を呆然と聞いている)」
ファレーネ
「ほ、ほ、ほ、ほ、本当に優勝するだなんて!!(呆然)」
アズール
「すっげーよ! やったじゃん! おれ、親父はこのままずっとお袋の陰に隠れたまんまなのかなーと思ってたのにさ。やっぱ、あれかな。親父、今が脂が乗ってるっていうかさー。なんだか…、言うのが恥ずかしいけど、うん、素直にかっこいいって思ったぜ」
ジェイド
「うん、ソラ兄さんの言うとおりだよね。ただ攻め込むだけじゃなくて、相手の出方も頭で考えていて。技の威力はそれほどでもないけど、それこそ母さんと比べたら微弱だけど、攻め込みと防御との切り替えのタイミングが絶妙でさ。母さんの試合とはまた別の頭脳派の闘いを見たって感じだったよ」
アズール
「うんうん、いい試合を見れたって感じ。体術の使い方も巧かったし。くう〜、リーグ戦で闘うのが益々楽しみになってきた!」
アムラーム
「そ、そうかい…。なんだかそこまで褒められると照れるな」
ファレーネ
「…ああ、本当に驚いた。でも、おめでとう、アム。私、自分のことみたいに誇らしいわ」
アムラーム
「ありがとう、ファレーネ」
ファレーネ
「…だけど、なんだか一大発起って感じだったわよねえ。何かあったの?」
アズール
「それはおれも気になる」
アムラーム
「ああ…。うん、ちょっとな。これを逃したら、もう機会がないんじゃないかとも思ったし。…それに、約束したからな」
ファレーネ
「約束?」
アムラーム
「そう」
ジェイド
「…やっぱり父さんは父さんだったね。見直した。改めておめでとう」
アムラーム
「ああ、ありがとうな」
ファレーネ
「何!? 何なの!? 二人で意味ありげに顔を合わせて、一体何の約束をしたの!?」
ジェイド
「ん、内緒にしとくよ。恥ずかしいしね」
アムラーム
「…ということらしいぞ」
ファレーネ
「ええー!? …むぅ、私が知らないことがあるなんて、そんなの嫌だわ。落ち着かないわ。むしろ、私はPCなのよ!? PCというのはイコール神様なのに! ほらほら〜、だから教えなさい。とっとと白状するべきなのよ!(アムラームを突っつき始める)」
アムラーム
「ふ、ファレーネ、ち、ちょっと、こら! やめなさい!(汗)」
アズール
「…なあ、おふくろぉ、今回はただでさえ見苦しい姿を見せてんだからさあ、これ以上はやめとけよー(汗)」
ジェイド
「あはははは…(苦笑)」

アムラーム、おめでとうー!(><)まるで自分のことのように喜んだのは他でもないこの私(笑)。この年、アムってばAリーグ1位にもなったんですよ。結局PCのほうのショルグ長順位が勝ってしまったらしくて、ショルグ長にはなれなかったんですが。で、かわりに就いたのがこれまたアズールだったりもするんですが(笑)。

アズール
「ふふん、すげーだろ。やっぱり、おれ、大活躍だったね!」

いい加減、上4人は人の親にもなったんだから落ち着かせないと、と思ってキャラを少しずつ変えているんですが、なかなかどうして。難しいな…。アズールなんかはいつまでたっても子供みたいな人のような気もするんですけどねえ。

…結局、予告通りにアズールが意外と出張ってましたねえ(笑)。

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